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『中川深衣編』

タグ:オリジナル VR ひとりでラノベ

  ヴァーチャルとリアルが交錯するこの世界で

  『中川深衣編』


  1

 中川深衣(なかがわみい)は魔法使いだった。
 オンラインゲーム「アカシック年代記」における魔法使いには大別すると二種類ある。
 主に攻撃魔法を主体として、モンスターにダメージを与えることを役割とした、ウィザード。
 対して、回復魔法をメインとする、ヒーラー。
中川深衣の操る、キャラクター名「みぃ」は、前者のウィザードと呼ばれる職種を選択している。攻撃魔法の専門家である。
 ちなみに、俺の職種は後者のヒーラーである。ヒーラーの中でも、回復魔法だけでなく付与魔法と状態変化魔法も操れる、いわゆるハイブリッド型のヒーラーである。回復魔法の威力はヒールに特化したタイプには及ばないものの、その分、敵の動きを封じたり、味方をパワーアップさせる、バフと呼ばれる付与魔法も使うことができる。



 みぃ、は強い口調で言いはなった。
「あんたは黙ってついてくればいいのよっ!」
 中川深衣は相変わらずわがままだった。小学生の時からそうだ。有無を言わせず、あちこちに連れ回す。呼びつけておいて、待たせる。アカシック年代記のワールド内でもその性格にまるで変化はなかった。
「そうはいっても、WIZとヒーラーでどうやって狩りするんだよ・・・・・・」
 アカシック年代記では、6人ほどのパーティーを組んで狩りに行くのが普通である。前衛職と後衛職で役割分担して、バランスよくパーティーを組むものなのだ。がしかし、WIZもヒーラーも後衛職である。アカシック年代記においては、このふたりだけでモンスターを倒すことはかなり難しい。
「あんたがモンスターの動きを遅くして、わたしが攻撃魔法を撃つ。ダメージを受けたらあんたがヒールする。完璧じゃない。ほらっ、行くわよっ!あの城門にいるオークガード、あれにスローの魔法かけてきて。そしたら、あたしが魔法撃ち込むから」
 言っていることは一見正しいが、どうなることやら。俺は建物の陰に隠れながら、オークガードの視界に入らないように注意して、スローの魔法をかけた。



「オークガードにスローの魔法をかけます。効果30sec」
 一条の光がスプリングのようにグルグルと回転しながら、オークガードを包み込む。
 
 レジスト!
 
 スローの魔法はオークガードにはじき返されてしまった。と同時に、こちらに反応し、向かってくる。
「げっ、レジられた」
 まさかレジストされるとは・・・・・・このレベルだとスローの成功率95%くらいなはずなのに・・・・・・
「おろかなオークガードよ、滝に打たれて頭を冷やしなさいっ!WaterFall!」
 水の塊が空から降ってきて、オークガードに直撃する。みぃは、魔法が命中するとすぐさま走って逃げだした。オークガードがターゲットをみぃに変更したからだ。
「オークガードにスローの魔法をかけます。効果30sec」
 その隙にもう一度スローを掛ける。今度は成功。オークガードの移動速度は半分にまで落ちた。効果は30秒持続する。
 みぃはオークガードの移動速度低下を見て、距離を十分に保ちながら攻撃魔法の詠唱を開始した。
「水の精霊、ウンディーネよ。哀れなオークガードを霧の中に隠し給え。AcidFog!」
 オークガードの周囲に毒々しい色をした霧が立ちこめ、そのままオークガードは立ち止まってしまった。視界を遮られ、毒の霧に包まれたまま、オークガードは毒のダメージを受け続ける。
「ふう。これで後はほっとくだけね。」
 やれやれ、といった感じを漂わせながら、みぃはその場に座り込んだ。このゲームでは座っている方がMP(マジックポイント)の回復が速い為、魔法型のキャラクターはたいてい座ったままなのだ。
 俺もみぃの横に座り込むと、
「意外となんとかなるもんだな。こういうのもたまにはいいかも。まあ、経験効率はアレだが・・・・・・」
 みぃはムッとした感じで、
「経験効率は悪いけど、ドロップはふたりで山分けじゃない。お金は貯まるわよ。それに、上手くやれば効率だって良くなるんだからっ」
 みぃの、負けず嫌いだけど、どこか柔和(にゅうわ)なところが子供の頃から好きだった。鼻っ柱の強いわりに、棘(とげ)がない。水の流れのように受け答えが軟(やわ)らかでありながら、筋が一本通っている。要するに頭がよいのだろう。この頭がよくてかわいらしい子が、なぜ俺などにまとわりついてくるのかは謎だった。幼なじみだからというのもあるだろうが、もっと別の感情があるように、日々感じていた。

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